夏を中心に流行しやすい手足口病。なかには“集団感染”に発展するケースも。
この記事では、手足口病がうつる「感染ルート」や「予防方法」について、荒牧内科の荒牧先生に聞きました。
監修者
荒牧内科
院長:荒牧竜太郎先生
【職務経験】
福岡大学病院
西田厚徳病院
1998年 埼玉医科大学 卒業
1998年 福岡大学病院 臨床研修
2000年 福岡大学病院 呼吸器科入局
2012年 荒牧内科開業
手足口病がうつる期間
いつからうつる?
発症すれば一気に感染能力が高まります。
潜伏期間はウイルスが体内で増殖を繰り返しており、この時期には一般的には感染しないと言われています。その後急性期を迎え、発症すれば一気に感染能力が高まります。
いつまでうつる?
手足口病はいつまで人にうつるのでしょうか?
症状が治まった後も、2~4週間は注意が必要です。
手足口病の症状が治癒した後も、ウイルスは便から2〜4週間排出され続けます。この便の中に排出されたウイルスが口に入って感染する糞口感染に関しては、2〜4週間という長期間注意が必要です。
感染経路は?
手足口病の感染ルートは①飛沫感染、②接触感染、③糞口感染の3つがよく知られています。具体的に日常のどんなシーンでうつってしまうのかを聞いてみました。
手足口病の感染ルート
具体的に、どんな状況でうつってしまうことがありますか?
「くしゃみ」や「物の共有」、「おむつ替え」などでうつります。
① 飛沫感染…くしゃみ・唾液による感染
② 接触感染…手をつなぐ・子どもの口に手を入れる・子どもが口に入れたおもちゃの共有や、指をしゃぶった手を洗わずに触ったもの(ドアノブやリモコン、タオルなど)に他の人が触ると感染します。
③ 糞口感染…手足口病のウイルスは長期間便からウイルスが排出されています。親御さんは、おむつ替えやトイレでの処理を手伝ったりする場面が多いので、注意してください。
このような状況で感染につながります。特に幼稚園や保育園に通う子ども達は、衛生観念がまだ発達していないので、集団感染が起こりやすいと言えます。
プールでうつる?
手足口病の人と一緒にお風呂やプールに入ったらうつりますか?
唾液や便からうつるため、一緒にプールに入ったりお風呂に入ったりすれば、時期によっては感染する可能性はあります。子どもを入浴させなければいけない場合、発病間もないころなどの入浴は家族の最後にさせましょう。また、タオルの共有は避けてください。
洗濯物でうつる?
洗濯前の洗濯物からうつることはあります。
唾液や便のついた衣類を触る、舐めるなどして感染する可能性はあります。通常の洗濯でもウイルスを防ぐことが可能ですので、洗濯はしっかりと行い、日に当てて乾かしましょう。
感染予防のためにできる対策
保育園・幼稚園の予防対策
手足口病には、有効なワクチンや予防薬がありません。また、便からのウイルスが排出される期間が長いため、発病した人を長期間隔離しておくのも現実的ではありません。では、感染を予防するために、どんなことができるのでしょうか?
保育園や幼稚園の集団感染を防ぐために、どんな予防法があるでしょうか?
手洗い・うがい、マスク着用をしましょう。
うがい・手洗い・手指消毒を徹底して行う必要があります。子どもは、手洗い・うがいを忘れがちです。親御さんが帰宅時には確認をしてあげましょう。また、マスク着用も予防が期待できます。
家庭内の予防対策
お家でできる予防対策を教えてください。
手指消毒を徹底して、物の共有を避けましょう。
おむつをつけている子どもの場合は、オムツ替えの後には手洗い、手指消毒を行ってください。家族間でもうがい、手洗い、手指消毒は有効です。こまめに行いましょう。また、流行っている時期には、子ども同士のおもちゃの貸し借りは避けましょう。
大人にもうつる?(妊娠中・授乳中も)
子どもの病気として知られる手足口病ですが、まれに大人にうつることもあります。ママ・パパの感染予防のために何ができるのか、また妊婦の方や授乳中のママが気をつけるべきことも聞いてみました。
大人にも手足口病がうつることがあるのでしょうか?
大人にも感染します。
大人でも免疫力が低下していると、感染する場合があります。予防としては、子ども同様にうがい・手洗いをこまめに行ってください。また、疲れている時や栄養が偏っていると感染しやすくなりますので体調管理も必要です。
妊娠中の注意
妊娠中のママが手足口病にかかってしまったら、赤ちゃんに影響はあるのでしょうか?
現在、明らかな因果関係を証明する報告は確認できません。
まれに流産、死産、胎児水腫の報告があるようですが、胎児異常との明らかな因果関係を証明した報告はないと日本産婦人科医会より2019年7月に発表されています。
妊娠中のママが手足口病にかかってしまったら、どう対処すればいいでしょうか?
まずは安静に。体調が悪化した場合はかかりつけ医を受診しましょう。
妊娠中の心配
日本産婦人科医会より慎重な経過観察を行うように指示されていますので、感染した場合は、体調確認を十分に行い安静にして、体調に変化がある場合はかかりつけ医に相談しましょう。
授乳中の注意
授乳によって、赤ちゃんの手足口病がママにうつることはありますか?
赤ちゃんからママにうつる可能性はあります。
授乳は、赤ちゃんと接触する時間が長いので感染の可能性はあります。授乳後に赤ちゃんが触れた箇所は、消毒・洗浄を行いましょう。
授乳によって、ママの手足口病が赤ちゃんにうつってしまうことはありますか?
赤ちゃんにうつる可能性もあります。
これといった何か基準があるのではないのですが、手足口病の原因となるエンテロウイルスは母子感染する報告もあるようですので、呼吸器からの飛沫感染を起こしやすい発症から1週間程度 は授乳を避けたほうが良いようです。状況により注意点がかわりますので、かかりつけの産婦人科や小児科に相談してみてください。またその後も、ママと赤ちゃんの距離が近いので、赤ちゃんに感染させてしまうこともあり、授乳前にはマスクを着用したり、手洗いを十分にしてから行いましょう。
また、大人は子どもより熱が高くなる場合もあります。お母さんは休めない子育てと授乳でクタクタな場合もあると思いますので、万が一を考え、授乳は無理のないスタイルで行いましょう。
この記事は健康検定協会から「子育てエンジョイライフ」に提供されました。