夏に子どもの患者が増える「とびひ(正式病名:伝染性膿痂疹)」。
中には1ヶ月~半年以上症状が続き、「なかなか治らなくて心配…」とお悩みになるママ・パパもいるようです。
この記事では小田原銀座クリニックの長谷川先生に、赤ちゃんや幼児のとびひが治らない原因や、早く治すために日常生活で気をつけることを聞きました。
監修者
小田原銀座クリニック
長谷川佳子先生
【略歴】
2012年 北里大学医学部医学科卒業
2012年 横浜市立大学附属病院 初期臨床研修医
2013年 横浜市立大学 市民総合医療センター 初期臨床研修医
2014年 横浜市立大学附属病院 形成外科 入職
2015年 藤沢湘南台病院 入職
2016年小田原銀座クリニック 美容皮膚科
「なぜ治らないんだろう?」とお悩みのママ・パパに。まずはとびひが長引く原因を聞いてみました。
赤ちゃんや幼児のとびひがなかなか治らないとき、どういった原因が考えられるでしょうか?
薬が塗れていない、または薬が適していない可能性があります。
まずは、医師に処方してもらった、症状に見合った薬を、処方通りに使用できているか確認しましょう。薬が患部に塗れていなかったり、塗り忘れがあったりすると「とびひ」は、字のごとくどんどん飛び火します。薬は、丁寧に塗りましょう。
早く治すためにできること
かゆい…。痛そう…。早く治してあげるため、これ以上悪化されないために、ママ・パパが具体的にどんなことができるのでしょうか?
処置の際に気をつけること
早く治すために、患部はどのように処置したらいいでしょうか?
まずは、患部に薬を丁寧に塗ってください。
とびひは、患部の水疱や膿痂疹(じゅくじゅくした部分)に細菌が入っています。水ぶくれが破れ、中の液が染み出て、傷ついた周りの皮膚に触れるとそこに新しい水疱・膿痂疹ができます。その部分がしっかり薬で覆われていないのが原因で、とびひは良くならない場合があります。
日常生活で気をつけるべきことはありますか?
シャワー入浴で、細菌をしっかり洗い流しましょう。
毎日、お風呂に入って細菌を洗い流す必要があります。とびひにしみる・痛みがあるからといって、子どもが入浴したがらないケースもありますが、清潔にすれば早く快方に向かいますので、保護者の方が入浴しているか確認しましょう。
<入浴の方法>
温めるとかゆみが出る場合もあるので、シャワー浴を行います。手に石鹸をよく泡立てて、患部をこすらないように優しく洗浄してください。また、うつさないため、家族との同時入浴は避け、最後に入浴させるようにして、タオルや衣類の共有は避けます。
<入浴後のケア>
患部に薬を丁寧に塗ります。子ども自身が薬を患部に塗っている場合は、塗り残しがないか、保護者の方の確認が必要です。
その他の気をつけること
早く治すために「避けたほうがいいこと」はありますか?
まずは「患部をかかない」こと。また、激しい運動や長時間の入浴は痒みの原因になります。
とびひはとてもかゆいのですが、患部をかくとどんどん広がり、肌の状態も悪化します。できるだけ触らないように、無意識に掻かないようにガーゼや包帯で保護をしておきましょう。
また運動や長時間の入浴でもかゆみが増すことがあります。激しい運動や長時間の入浴は控えましょう。かゆみが強い場合には冷やしてあげる事で症状を和らげられます。
市販薬は使ってもいいのでしょうか?
使用は可能ですが、薬剤師・医師に相談したほうがよいでしょう。
市販薬を自己判断で使用していると適したものではなく、快方に向かいにくい場合があります。市販薬のかゆみどめにはステロイドが入っている場合があり、細菌感染の場合は悪化の原因にもなります。
また、病院の処方薬でも、改善が悪いと判断されれば、細菌培養の検査を行い抗生剤を見直します。症状の改善が見られない場合は、小児科を受診してください。
部位・症状別の対処法
体の一部だけが治らない場合の対処法や、アトピーを併発している場合の治療法を聞きました。
頭のとびひ
こまめに洗い、細菌の繁殖を防ぎましょう。
頭は髪の毛があり細菌が繁殖しやすい環境です。また、汗をかきやすく、薬が流れてしまうことも多くあります。こまめにシャワー・石鹸で頭を洗い、細菌が繁殖しないようにしましょう。
鼻の中とびひ
かいたり触ったりするのを避けましょう。
頭のとびひと同様、細菌が繁殖しやすい環境です。また、常に湿っているので治りにくい場合があります。鼻の中のとびひも、内服薬を忘れずに飲み、丁寧に薬を塗って、かいたり、触ったりしないようにしてください。
水ぶくれ
病院で、水ぶくれの内容物を出す処置などをしてもらいましょう。
大きなものは、小児科や皮膚科で内容物を出して早く治癒するように治療を受けられます。病院を受診してみましょう。
重症化キケン
とびひの重症化
とびひが悪化して重症化した場合、どんな危険がありますか?
まれに、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(別名:SSSS)を発症する場合があります。
高熱・皮膚の腫れ・水ぶくれの症状が現れる病気です。猛烈な痛みが生じます。多くが入院しての治療が必要となります。
1ヶ月や半年以上、とびひの症状が続く場合、他の病気の可能性もあるのでしょうか?
免疫が低下している状態かもしれません。
とびひは、基本的に表皮だけの疾患ですが、色素沈着する場合もあるので、子どもの将来の皮膚状態のためにも、早期治療を受けましょう。菌を薬で退治しておけば、この病気は予防することができます。早めに小児科に相談を。
アトピー性皮膚炎との合併
アトピー性皮膚炎と合併している場合、どうすればいいのでしょうか?
悪化させないうちに快方に向かわせるのが第一。すぐに病院を受診しましょう。
アトピー性皮膚炎にとびひが合併すると、敗血症(細菌が血液中に入り込む)により、高熱や重症の状態になる場合があります。皮膚に違和感があればすぐに病院を受診し治療を受けましょう。
この記事は、健康検定協会から「子育てエンジョイライフ」に提供されたものです。
参考
保育所における感染症対策ガイドライン(2018 年改訂版)(案)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11921000-Kodomokateikyoku-Soumuka/0000199015.pdf
皮膚科Q&A|公益社団法人日本皮膚科学会
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa13/index.html
公益社団法人日本皮膚科学会 皮膚科Q&A とびひ
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa13/index.html
こどもの病気治療の本当のこと“Dr.365”のこどもの病気相談室 著/白岡亮平(小学館)