赤ちゃんに出やすい黄疸。
「これって大丈夫な黄疸?病院にいくべき?」と病的黄疸との見分け方がわからず、心配になるママ・パパも少なくありません。
この記事ではなごみクリニックの武井先生に、赤ちゃんの黄疸についてお話を伺いました。一般的な黄疸の期間や対策、病院を受診する目安も解説してもらいました。
なごみクリニック
院長
武井智昭 先生
生まれたばかりの赤ちゃんは、黄疸になりやすいんですか?
はい。新生児がなりやすい代表的な2つの黄疸があります。
この2つの場合、自然に消えていくため、それほど心配はいりません。
よくある黄疸① 生理的黄疸とは
生理的黄疸が起こる原因として、新生児は赤血球の形が変わり壊れやすいこと、まだまだ消化管と肝機能の働きが弱い状態であることが挙げられます。しかし、消化管の機能と肝機能の発達に伴い、ビリルビンを体外に出すことができるようになります。
自然に消えていくケースが多いため、さほど心配ないと考えられています。
よくある黄疸② 母乳性黄疸とは
母乳中にビリルビンの処理を抑える物質が含まれていることで、ビリルビンの血液中の濃度が上昇して黄疸が出現してきます。
こちらも自然に消えていくケースが多いため、さほど心配ないと考えられています。
検査数値の見方
検査の数値はどう見ればいいのでしょうか?
新生児の総ビリルビンの正常値は日齢ごとに決まり、光線療法などの適応基準があります。
しかし多くの場合、生後14日までには正常値まで戻ります。
黄疸の見分け方は?
「この黄疸・・・大丈夫?」と心配になりますよね。自然になることが多い黄疸と、病院に行くべき黄疸の違いを説明してもらいました。
自然に治ることが多い黄疸
生理的黄疸の特徴
出産後2、3日後にまず白目が黄色っぽくなり、その後肌の色も黄色になる。
生後1週間目以降は自然になくなる。
母乳性黄疸の特徴
母乳を飲んでいる新生児の2/3以上に、生後5~7日頃に白目が黄色っぽくなり、そして肌の色も黄色っぽくなる。2~3週間(もしくはそれ以上)継続することがある。
※2週間以上続く場合、母乳性黄疸かまたは他の病気かの鑑別が必要なので、医療機関に相談してください。
病院を受診するべき黄疸
病的黄疸の特徴
病的黄疸がみられる場合、感覚神経欠損、精神発達遅延等をきたす場合があります。以下のような赤ちゃんの様子がある場合は注意してください。
生後1日以内に黄疸が現れる。
反応が薄い
哺乳ができない
うんちの色が白っぽい(胆道閉鎖症の疑い) 発熱等がみられる。
他にも、おっぱいの吸い付きが悪い、うんちの回数が少ない、体重増加が乏しい、いつも眠そうで元気がない場合には医療機関を受診してください。
黄疸はいつまで続く?
黄疸はいつまで続くのでしょうか。黄疸のピークや長引くケースについても解説していただきました。
生理的黄疸の出現期間とピーク
生まれてから2、3日で現れて、4、5日でピークを迎えます。そして1週間ほど経過すると自然に消失していきます。
母乳性黄疸のの出現期間とピーク
生後5~7日頃に出現し、14日頃にピークとなり、長い場合は1か月ほど継続されます。母乳を中止する必要はないと考えられていますが、心配な場合は医師に相談しましょう。
黄疸が長引いている
新生児黄疸が長引く原因はどんなことが考えられるでしょうか?
母乳により肝臓の成長が少し遅れてしまう場合に起こる、「遷延性黄疸(せんえいせいおうだん)」かと考えられます。
遷延性黄疸は母乳性黄疸のことが多く、その場合は生後1~2か月ほどで自然に治るためさほど心配はいりません。しかし、肝臓機能に異常がみられる場合等にも、黄疸がなかなか治らないケースがあるようです。
後遺症の危険
生理的黄疸を放置した場合、後遺症が残る可能性はありますか?
アテトーゼ型の麻痺など後遺症が残る可能性はあります。
ビリルビンが脳内に侵入し、脳細胞に沈着して神経障害を起こすためと考えられています。
哺乳力が弱い
ぐったりして反応が薄い
といった場合は要注意です。
手足のつっぱり、体の反り、筋肉の緊張等が起こり、チアノーゼやけいれんが起こるようになります。その後、難聴、上方凝視麻痺等の後遺症が出現します。
病院を受診するとき
出産した医療機関や小児科の受診をおすすめします。
どういった治療法になるのでしょうか?
<軽度の場合>
光線療法(皮膚のビリルビンを分解して黄疸を薄くする)が行われるケースが多いようです。
<重度の場合>
赤ちゃんの体内のビリルビンを出すために、新しい血液と交換する輸血が行われるケースがあります。
黄疸対策のためにできること
母乳
新生児黄疸の症状を和らげるために、できることを教えてください。
母乳の摂取が足りていない場合に黄疸を起こす可能性があります。
母乳が不足すると、水分も不足するため、うんちの回数が減り、その分ビリルビンも出すことができず体内に留まってしまいます。
この状態を解消するには、新生児が十分な量の母乳を継続して飲み続ける必要があります。母乳をしっかり飲めるようになると、多くの場合で黄疸は緩和されると考えられています。
この記事は、健康検定協会から「子育てエンジョイライフ」へ提供されたものです。
参考
新生児黄疸 – 23. 小児の健康上の問題 – MSDマニュアル家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/23-小児の健康上の問題/新生児の問題/新生児黄疸