「歯が痛い気がするけど歯医者に行くのは怖い……」
なんて思って、虫歯を放置してしまっている方もいらっしゃるかもしれませんね。
虫歯くらい平気、と思うかもしれませんが、虫歯菌は歯だけでなく全身にまわり体にも影響を及ぼすこともあるのです。
今回は虫歯を放置しているとどうなってしまうかを歯科医の菊地由利佳先生にご紹介いただきました。
■虫歯を放置すると歯は“死んで”しまう!?
歯の中心には、歯髄(しずい)というものがあります。これは歯にとって、とても大切なもの。歯髄は、体における血管やリンパ、神経と同じような働きをしているためです。そのため、歯は歯髄を守るように、象牙質・エナメル質に覆われた構造をしています。
しかし、虫歯になるとエナメル質が溶けて穴が開き、虫歯菌は象牙質へと進行していくのです。ここまでなら、症状は「少ししみる」「噛むと痛い」といった程度ですが、そのまま放置し続けると虫歯菌は歯髄に到達します。虫歯菌が歯髄に感染すると炎症を起こし、我慢できないような痛みがでます。そのうえ歯髄は腐敗してしまいます。
よく「歯が死ぬ」なんて聞きますが、これは歯髄が腐敗してしまった状態のこと。歯科では「失活歯(しっかつし)」と呼びます。(歯髄が生きている正常な歯は「生活歯(せいかつし)」と呼びます。)
■失活歯になるとどうなるの?
失活歯になると、歯の根から歯髄を通して象牙質へ栄養を送ることができなくなるため、歯はもろくなってしまいます。木が根から水や栄養を幹に届けられなくなると枯れてしまうのと同じです。そのほか、「冷たい・熱い」などの感覚がなくなる、歯の色が変色するなどの症状が考えられます。
ちなみに、失活歯は虫歯以外が原因になることもあります。たとえば重度の歯周病。そのほか、歯を事故などでぶつけてしまって歯が割れ、歯髄がむきだしになったり、歯の中で内出血を起こしたり……。こうした理由で、歯髄が腐敗してしまうこともあります。
■失活歯を放置していると全身に影響を及ぼすことも…
歯髄が失活してしまうと、歯は体にとって有害な汚染物・腐敗物といえるものに変わってしまいます。
虫歯菌に感染した歯髄は臭いドロッとした膿となり、このなかで細菌がどんどん増えていきます。増えた細菌は歯の根を通って顎骨や歯茎にまで進行し、膿の袋を作ります。当然痛みがでますし、顔が半分腫れるくらいまで炎症が広がることもあります。
さらに虫歯菌や膿の細菌は、誤嚥性肺炎を引き起こしたり、脳に飛んでしまったり、全身に回って敗血症になり死に至ることもあるようです。特に高齢者や疾患をお持ちの方は注意しなければいけません。
■失活歯は治せる?
■失活歯のセルフチェック方法は?など続きはこちらです。