子どもに多い皮膚の感染症ですが、子どもから大人にうつる場合もあります。
「早く治したい」「なかなか治らなくて困っている」とお悩みの方も少なくないようです。この記事では、とびひを悪化させない対処法を、小田原銀座クリニックの長谷川先生に聞きました。洗濯やお風呂の際の注意点や、家族にうつさないために気をつけることも伺ったので参考にしてくださいね。
小田原銀座クリニック
長谷川佳子先生
【略歴】
2012年 北里大学医学部医学科卒業
2012年 横浜市立大学附属病院 初期臨床研修医
2013年 横浜市立大学 市民総合医療センター 初期臨床研修医
2014年 横浜市立大学附属病院 形成外科 入職
2015年 藤沢湘南台病院 入職
2016年小田原銀座クリニック 美容皮膚科
子どもから大人に、とびひがうつることはあるのでしょうか?
大人にうつることもあります。
子どもから大人にうつることもあります。
とびひの主な原因は、「黄色ブドウ球菌」「連鎖球菌」という細菌です。大人の場合、健康で免疫がしっかりしていればうつりにくいのですが、免疫力が低下しているとうつりやすくなります。
特に高齢者は、皮膚も薄く皮膚のバリア機能も低下しているので注意が必要です。
“大人ならでは”の症状はあるのでしょうか?
かさぶたタイプの溶血性連鎖球菌(溶連菌)のとびひが多いです。
とびひにはタイプがあります。かさぶたができるタイプのとびひは、溶血性連鎖球菌(溶連菌)が原因です。このタイプは、子どもよりも大人に多く見られます。夏だけではなく、季節に関係なく発症します。熱いかさぶた・紅い斑点・米粒大の膿・発熱・のどの痛みなどを伴うとびひです。
大人のとびひは自然治癒する?
自然治癒することもありますが、早めに病院を受診するようにしましょう。
とびひは、自然に治癒していく場合もありますが、それまでには長期間を要するでしょう。早くに治療を受け悪化させないようにするのが得策です。とびひが身体中に広がる前に病院を受診しましょう。
病院は、何科に行けばいいのでしょうか?
大人は皮膚科を受診してください。
大人の場合は、皮膚科を受診してください。子どものとびひは小児科、もしくは皮膚科でも大丈夫です。
大人のとびひを早く治す方法
まずは、皮膚科で薬をもらいましょう。
症状が軽ければ、抗生剤の入った塗り薬を処方します。とびひが全身に広がっている場合は、塗り薬に加えて抗生剤の内服を行います。
正しくケアをした場合、治るまでの期間の目安はどれくらいですか?
症状の改善が見られるのは、平均5〜7日間ほどです。
処方薬を使用して、2〜3日目に治療があっているかの判定を行います。患部の改善が良くない場合は、皮膚の細菌培養をして抗生剤の種類を変えます。
市販薬の使用について
市販の軟膏は塗っても大丈夫なのでしょうか?
初期の場合は市販薬が有効な場合もありますが…。
初期の状態であれば、市販薬も有効な場合もありますが、症状が進んでいる場合は、早めに病院を受診しましょう。市販薬は、自身で選ぶのではなく、薬剤師に症状を話して選んでもらうほうが良いでしょう。
大人のとびひが「治らない原因」は何でしょうか?
無意識にかいている可能性があります。
とびひは、かいてしまうと広がり悪化します。なかなか治らない人は、寝ている時や無意識な状態の際に患部をかいているかもしれません。
治らない場合の対処法
とびひの症状が長く続く場合の対処法を教えてください。
かけないように患部を覆い、しっかり完治するまで薬を使用しましょう。
患部はガーゼで覆い、かけないようにしましょう。また、爪は短く切っておきましょう。
とびひは、治療を開始すれば数日で症状が落ち着きます。しかし、症状が落ち着いてきたからといって、勝手な判断で処方薬をやめると治療が完治せずに長引く場合があります。医師に指示された通りに薬は使用しましょう。
重症化のキケン
大人のとびひが重症化することはありますか?
猛烈な痛みをともなう「ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群」を発症する場合があります。
稀ではありますが、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(別名:SSSS)を発症する場合があります。これは、ブドウ球菌がつくり出す毒素が、血液中に入り発症します。高熱・皮膚の腫れ・水ぶくれといった症状が現れます。触っただけでも皮膚がはがれるので、猛烈な痛みが生じます。多くが入院しての治療を必要とします。
大人のとびひQ&A(洗濯やお風呂、外出など)
洗濯するときの注意点はありますか?
いつも通りの洗濯で問題ありません。
洗濯は、通常通りで構いません。他のものと同時に洗っても大丈夫です。
お風呂
シャワー浴を行い、細菌を洗い流しましょう。
とびひの患者さんは、痛みがあるとお風呂に入りたがらない場合もありますが、毎日、お風呂に入って細菌を洗い流す必要があります。手に石鹸をよく泡立てて、患部をこすらないように優しく洗浄してください。温めるとかゆみが出る場合もあるので、シャワー浴を行いましょう。また、うつさないため、家族との同時入浴は避け、最後に入浴させるようにして、タオルや衣類の共有は避けましょう。
外出
外出OKですが、じゅくじゅくした患部をガーゼで覆ってから出かけましょう。
とびひは、患部の水疱や膿痂疹(じゅくじゅくした部分)に細菌が入っています。水ぶくれが破れ、中の液が染み出て傷ついた周りの皮膚に触れると、そこに新しい水疱・膿痂疹ができるのです。
そのため、外出に制限はありませんが、外に出る場合は水疱や膿痂疹の部分をガーゼで覆うと良いでしょう。
授乳中のママが気をつけること
授乳中のママがとびひになった場合、子どもにうつさないようにするにはどうすればいいでしょうか?
ガーゼで患部を覆う処置と、早めの受診を。
授乳中は、赤ちゃんと密接な接触があります。赤ちゃんにとびひをうつさないように、授乳やお世話中には、ガーゼで患部を覆い、赤ちゃんが触っても大丈夫なようにしておきましょう。特にママや家族が、とびひになった場合は、すぐに皮膚科を受診して早めに治療を受けましょう。
この記事は、健康検定協会から「子育てエンジョイライフ」に提供されたものです。
参考
こどもの病気治療の本当のこと“Dr.365”のこどもの病気相談室 著/白岡亮平(小学館)
公益社団法人日本皮膚科学会 皮膚科Q&A とびひ
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa13/index.html