周りの人にはなかなか相談できないデリケートゾーンの悩み。
この記事では、デリケートゾーンのかゆみの原因と対処法をはじめ、考えられる病気まで、医師に詳しく解説していただきました。
「自分で改善できる?」
「オロナインやワセリンで良くなるの?」
このような疑問にもお答えします。
病院を受診する判断基準についても伺いましたので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
監修者
小田原銀座クリニック
形成外科医
長谷川 佳子先生
横浜市立大学臨床研修医を経て、横浜市立大学形成外科入局
横浜市立大学病院 形成外科、藤沢湘南台病院 形成外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科
を経て横浜栄共済病院 形成外科
平成26年よりKO CLINICに勤務
平成29年2月より小田原銀座クリニックに勤務
デリケートゾーンのかゆみの原因は?
- デリケートゾーンが蒸れる(生理用ナプキンの使用等)
- ホルモンバランスの変化によるもの
- 膀胱炎
- 産後
- 抗菌薬を服用している場合
- かぶれ(接触性皮膚炎)
- アレルギー
- ストレス
- 性感染症(STD)
夜だけかゆくなるのはなぜ?
夜だけかゆみが生じる場合は、下記の原因が考えられます。
40度以上の熱いお風呂に入る
熱いお湯に浸かり過ぎると、皮脂が失われて乾燥しやすくなります。
お風呂で過剰に洗い過ぎる
デリケートゾーンをゴシゴシ洗い過ぎると、刺激が生じてかゆみや黒ずみを引き起こす場合があります。
バスタオル等で拭き過ぎる
お風呂上り等にデリケートゾーンをタオルでゴシゴシ拭くと、摩擦による刺激で肌を痛めたり、乾燥しやすくなってしまい、かゆみにつながる場合があります。
洗いすぎはNG
膣内には、清潔な状態を守るための自浄作用をもつ常在菌が存在しています。
しかし、デリケートゾーンを必要以上に洗うと、常在菌まで一緒に流してしまう可能性があります。
石鹸や脱毛の刺激にも注意
石鹸によっては、常在菌を殺菌、もしくは膣内酸性度を変えてしまうものもあります。
脱毛等の刺激も掻痒感に繋がります。
しかし、洗ったあとに保湿などのケアをすることでバリア機能が高まり、痒みを軽減させることは可能です。
症状別|デリケートゾーンがかゆくなる病気
性器ヘルペス
単純ヘルペス(ウイルス)が原因で起こる感染症です。
かゆみ、痛み、かぶれ(ただれ)等が生じる場合があります。
性器クラミジア
クラミジア・トラコマティス(細菌)が原因で起こる感染症です。
かゆみや残尿感、子宮頸管炎(帯下や不正出血などの症状が起こる、子宮頸管の炎症)を起こし、不妊の原因になったりする場合があります。
膣トリコモナス症
膣トリコモナス(原虫、単細胞微生物)が原因で起こる感染症です。
ひどいかゆみに加えて、悪臭を伴うおりものの増加等が生じる場合があります。
膣カンジダ症
カンジダ(カビ・真菌)が原因で起こる感染症です。
カンジダ菌は、健常者の体にもともと常在している場合が多い菌です。
妊娠中や免疫力が低下しているときに菌が増えて発症するケースが多いようです。
かゆみの他に、ヨーグルト状のおりものの増加が起こります。
白癬菌(いんきんたむし)
白癬菌(カビ・真菌)が原因で起こる感染症です。
強いかゆみが生じるケースが多いようです。
毛ジラミ症
毛ジラミ(吸血昆虫)が陰毛に寄生することが原因で起こる感染症。
強いかゆみが生じます。
細菌性膣炎
デリケートゾーンから検出されるケースが多い病原体(黄色ブドウ球菌、大腸菌等)が活性化して炎症を起こす疾患です。
悪臭を伴う水のようなおりものが多量に出て、かゆみ、痛み、ただれ等の症状を起こします。
硬化性苔癬
閉経後や10歳以下の女児に多くみられる疾患で、強いかゆみ、水膨れや潰瘍が生じて白く変色するのが特徴です。
自己免疫疾患(自分の組織を攻撃してしまう、免疫機能が誤作動を起こす病気)の一つとされています。
かゆみの対処法|薬と正しいケア方法
市販薬でかゆみを改善する
かゆみやただれであれば、市販薬を使用しても構いません。
しかし、あくまでも根本治療ではなく、対症療法という認識で使用しましょう。
おすすめの市販薬
- フェミニーナシリーズ(軟膏、ジェル、ミスト)
- ユースキンラフィ
- ワセリン
- オイラックス(鎮痒消炎薬)
- エンペキュア
- ゲンタシン軟膏
- オロナインH軟膏(白癬菌の場合)
薬局等でデリケートゾーン専用の市販薬を購入しにくい場合には、乳幼児にも使用できるとされている「オイラックスソフト」という市販薬もあります。
ただし、皮膚感染を伴う湿疹・皮膚炎には使用しないことが原則です。
適切な抗菌剤や抗真菌剤による治療が必要なものもあるので、医師や薬剤師、登録販売者に相談の上、使用しましょう。
例えば、性器クラミジア感染症は、抗生物質を服用しないと治りません。
クラミジア以外でも、症状が軽い場合は市販薬で対応できる場合がありますが、症状が悪化している場合や2週間ほど使用しても改善がみられない場合には、医療機関を受診してください。
漢方薬
次の漢方薬の内服と蛇床子(ジャショウシ)という生薬煎液の外用を併用すると、デリケートゾーンのかゆみの改善が期待できるとされています。
- 苓姜朮甘湯(リョウキョウジュツカントウ)
- 完帯湯(カンタイトウ)
- 桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)等
また、次の生薬が用いられるケースもあるようです。
- 大黄(ダイオウ)
- 山梔子(サンシシ)
- 牡丹皮(ボタンピ)
- 赤芍(セキシャク)
- 生地黄(ショウジオウ)
- 紫根(シコン)等
ベビーパウダーで蒸れや摩擦を防ぐ
主成分がコーンスターチであるベビーパウダー(無香料、無添加のタイプ)は、皮膚の蒸れや摩擦を軽減する効能が期待できるとされています。
ヨーグルトで膣カンジダを予防
ヨーグルト等の乳酸菌を多く含む食品を摂ると、腸内環境が正常化され 、膣カンジダの予防が期待できるという説もあるようです。
その他、かゆみの対策・予防法
次の行動を心がけましょう。
- 生理用ナプキンやおりものシートはこまめに交換する(トイレの度、そして3~4時間に1回または1日に2~3回の頻度で買えるようにすると良い)
- 生理用ナプキンはできるだけ肌に合う低刺激な素材のものを使用する
- タンポンを長時間使用しない(2時間程度で交換する)
- 通気性や肌当たりの良い下着を着用する
- デリケートゾーンを洗浄する際は、タオルや固いスポンジは使わずに 清潔な手で洗う(石鹸をしっかり泡立てて優しく拭き取るようにする)
- 炎症で火照っている場合は冷やす
- 馬油を使ってケアする
- ストレスを溜め込まない(過度なストレスは免疫の働きを抑制するため)
治らない場合は病院へ
おりものが増加している、おりもののにおいが気になる、かゆみがひどい、赤くかぶれている、痛みがある、発疹がある、発熱がある場合は、できるだけ早急(数日中)に医療機関を受診してください。
何科を受診?
婦人科、皮膚科を受診しましょう。