風邪のときに抗生物質を処方される理由や、抗生物質の副作用について、医師に詳しく伺いました。
「風邪に抗生物質は効く?効かない?」
「抗生物質の点滴と飲み薬、どう違うの?」
このような疑問をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
風邪に抗生物質は効く?効かない?
ウイルスと細菌には構造上に大きな違いがあり、増殖していくシステムも異なります。
例外として、ウイルスが原因で起きた細菌による二次感染の場合には抗生物質が使用されるケースがありますが、原則として風邪では抗生剤は不要です。
風邪なのに抗生物質を処方される理由
風邪による扁桃腺炎や肺炎など、細菌性の疾患を発症している場合のみ処方されます。
しかし、細菌性はごく稀です。
抗生物質の種類
フロモックス(セフェム系)
のどの痛みを起こしている細菌を殺菌することで症状の緩和が期待できます。
(腹痛、下痢)が生じる場合があるため、医師の指示に従って使用してください。
クラビット(ニューキノロン系・合成抗菌薬)
細菌増殖に必要な遺伝情報をもつDNAの生成を害して殺菌する薬です。
組織への移行性が高く、殺菌力もあるため、対象になる菌の種類が多いという特徴があります。
気管支炎、肺炎、副鼻腔炎、膀胱炎等の治療に用いられる場合があります。
飲み薬と点滴の違いは?
飲み薬
飲み薬は胃を通り、腸に送られながら徐々に溶けていき、小腸壁から血液中に吸収されて肝臓に送られ全身に運ばれます。
血液中に吸収されるまでに20分程度かかるため、薬の効き目が出るまでに多少時間を要します。
飲み薬の場合、多くの成分が小腸で吸収されるので、成分吸収率は点滴より少ないです。
患者自身が自分で薬を飲むことで治療ができるため、自宅治療の場合に行われるケースが多いです。
点滴
風邪の場合、抗生剤は使いません。
点滴(注射)をする場合は、水分、栄養が不足していてすぐに補充が必要な場合や重症の場合、緊急対応が必要な場合等に点滴治療が行われるケースが多いようです。
血管に直に薬を入れるため、そのまま吸収されるので、すぐに全身に薬が送られて、その効能を発揮することができます。
子どもや赤ちゃんも大人と同じ抗生物質が使える?
子どもや赤ちゃんも大人と同じ種類の抗生物質を使用する場合がありますが、使用量は大人とは異なります。(使用量は子どもの体重から換算する)
使用できない種類の抗生物質もあるので、医師の指示に従いましょう。
着色歯・アレルギー疾患を引き起こす可能性も
また、2歳未満の子どもの場合、将来的なアレルギー疾患を予防するために、抗生物質の使用は控える、または慎重に検討する必要があります。
溶連菌感染症、中耳炎、細菌性肺炎等は抗生物質が効きやすいと考えられています。
抗生物質の副作用
生理が遅れる?
どちらかというと、薬を服用しなければいけない健康状態に問題がある場合が多いようです。
太る?
服用したことで、体内(腸内)の常在菌の中で健康維持や体重維持に必要不可欠な有益な菌にまで影響を与えてしまった場合にあるかもしれませんが、医学的根拠は薄いと考えられます。
よく生じる副作用は下痢
抗生物質の副作用として出現しやすい症状が下痢です。
腸内細菌のバランスが壊れるために起こると考えられています。
(腸内で消化吸収を補助している細菌まで抗生物質が撃退してしまうため)
皮膚疾患
皮膚が赤く腫れる、湿疹が生じる等の症状が起こる場合があります。
ひどい湿疹、水膨れ、発熱等がみられる場合は服用を中止して医療機関を受診してください。
胃腸障害
抗生物質の副作用として、吐き気、胃もたれ、むかつき等の症状が現れるケースは多いです。
胃酸の影響を強める、胃粘膜に害を与える等が起こるためと考えられています。
薬剤耐性菌を増加させる
むしろ、不要に使用してしまうと、薬剤耐性菌(※)の増加を促す恐れがあります。
そのため各医療機関に向けて、風邪には抗生物質を使用しない方針にすることが厚生労働省からも推奨されています。
※薬剤耐性菌 …薬を投与しても、薬に対する抵抗力を持ってしまった菌のことで、薬の効果があらわれなくなります。