【執筆・監修】
内科医 岡村信良(医療法人 小田原博信会 久野銀座クリニック)
管理栄養士 望月理恵子
カンピロバクターと聞くと、鶏肉料理を連想する人も多いでしょう。
鶏肉の鮮度は影響あるのでしょうか?また、加熱は何度まで必要でしょうか?
さらに、ギランバレー症候群との関係についても、お医者さんと管理栄養士さんに詳しくお話を伺いました。
カンピロバクターはどんな鶏料理から感染する?
鶏肉は、カンピロバクター腸炎の原因となる食品の一つです。
特に、鶏刺し、鶏レバー、鶏わさ、鶏肉たたき等、生の状態、半生の状態、加熱不足の鶏肉の調理に起因するケースが多いです。
カンピロバクターは、主に肉の表面に付着していることが多く、基本的には表面を加熱すれば死滅します。鶏肉が新鮮であっても感染の恐れはあるため、非加熱や半生状態で食べるのは控えましょう。
鶏肉からカンピロバクターの感染を防ぐには
肉類は生で食べず、中心部が75度以上で1分以上になるよう加熱してください。(湯引きは中心部まで高温にならないためNG)
また、肉の色が白くなるまで加熱し、中心部までしっかりと火が通っているかどうか確かめてから食べましょう。(ピンク色の場合はNG)
バーベキュー等では、よく加熱したつもりが実は中まで火が通っていなかったというケースが多く、注意が必要です。
肉団子やつくね等ミンチ状の肉は特に、表面だけでなく中心部まで確実に火が通るようにしてください。
焼き鳥など加熱してあっても、余裕は禁物!
焼き鳥は、串に刺した肉と肉の間に焼きむらができることがあります。購入後すぐに食べない時は、一度電子レンジ等で加熱してから食べてください。
東京都健康安全研究センターの実験に基づくデータによれば、焼き鳥(塩)はガスで7分、炭火で12分以上、焼き鳥(タレ)はガスで8分、炭火で10分以上、バーベキューは15分以上が加熱の目安としています。
カンピロバクター菌は冷凍状態でも生存できる
カンピロバクターは熱や乾燥に弱いですが、湿気のある状態であれば10度以下や凍結状態でも生存できると言われています。
鶏肉以外で感染する食材は?
牛や豚の消化管内にもカンピロバクターは生息しており、鶏肉以外では、牛生レバー、消毒不十分な井戸水や水道からの飲料水や未殺菌の原料から作られたチーズなどでも感染することがあります。
鶏肉と同様に生の状態で食べる肉類は避けましょう。
また、汚染された食品から野菜など他の食品への二次感染もあります。
感染したら…市販の薬は飲んでもいいの?
カンピロバクター腸炎の初期症状は、風邪の症状等と類似しているため、自分で判断するのは困難です。
病気の種類によっては、市販の下痢止め薬等の使用で、さらに症状を悪化させてしまう可能性もあります。自己判断で服用せず、医療機関を受診して正確な原因を突き止めてから治療を始めてください。
ギランバレー症候群発症のおそれも
カンピロバクターに感染すると発症するおそれがあるギランバレー症候群。どのような病気なのでしょうか?
ギランバレー症候群ってどんな病気?
ギランバレー症候群とは、急性突発性多発根神経炎で、末梢神経や神経根でみられる炎症性脱髄疾患です。
ヒトは細菌に感染すると、体内で自己抗体が作られる場合があります。
この自己抗体が自らの神経に支障を与えることで、ギランバレー症候群は発症すると考えられています。
症状は?
感染症発症後、1~3週間ほどで症状が現れます。
初期症状は突然起こり、足が動きにくい、しびれ、脱力感等の神経症状が現れます。その後、手(腕)、体幹、顔面へと範囲が拡大していきます。
運動機能に支障が出ることが多く、力が入らない、階段が昇りにくい等の症状が現れ、悪化すると嚥下障害、呼吸困難、眼球周りの筋肉麻痺により物が二重に見える等の症状が起こります。
また、自律神経系にまで影響を及ぼす場合があり、不整脈や排尿障害等が起こる恐れもあります。
発症後、数か月で症状が改善することが多いですが、麻痺が残ったり、呼吸不全を起こしたり、命の危機に晒されることもあります。
カンピロバクターに感染すると、どのくらいの確率で発症しますか?
カンピロバクターの感染が疑われた患者のうち、0.1~0.2%くらいの割合でギランバレー症候群を発症しています。
カンピロバクターからのギランバレー症候群は重症化しやすいので注意が必要です。
ギランバレー症候群は予防できますか?
カンピロバクターに合併するギランバレー症候群予防のためには具体策として、鶏肉を食べるときはしっかり火を通すことが挙げられます。
少し気を付けて生活するだけで、十分予防が可能なので、ぜひ実践してください。
この記事は、健康検定協会から「EPARKレポート」に提供されました。
<参考>
知って防ごう カンピロバクター食中毒|「食品衛生の窓」東京都福祉保健局
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/campylo/report2a.html
食鳥肉や食肉の生食・加熱不足を原因とする食中毒に気をつけましょう
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0708/syokutyuudoku/sk-namakanetu.html
カンピロバクター食中毒予防について(Q&A) – 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000126281.html
けんこう教室 加熱不足にご用心 カンピロバクター食中毒 – 全日本民医連
カンピロバクター感染症とは – 国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/385-campylobacter-intro.html